わが心の南方2丁目
私は子どもの頃、長屋に住んでいた。
「岡山で万博があって、その古材を私のおじいさんが買うて建てた由緒ある長屋なんじゃ」
と祖母が言っていた。
「万博が岡山で?聞いたことねぇわ」
と思っていたが、後で調べたら昭和4年に大日本勧業博覧会というのが実際岡山で開催されていた。
岡山市中心部にあるにもかかわらず岡山空襲を免れ残った長屋。近所で夫婦喧嘩が始まったら子どもが避難してきたり、やんちゃな近所のお兄さんが留置所から脱走して警察が聞き込みに来たり、今思えばあしたのジョーが住んでいるような長屋だった。
そんな家が恥ずかしくて父親に「もっとええ家建てて」と頼んだら「家やこぉなんでもええんじゃ」と言われていたこともあったからか、28才の時にマイホームを建てたのかもしれない。 祖母も両親もなくなった今、思い出の長屋地区は風変りをしている。
そんな中昔のまま残っていた我が実家を含む3軒の内の1軒が解体された。 思い出がいっぱい詰まった南方2丁目はわが心の故郷である。